こんな悩みを抱えている看護師の方は少なくありません。
看護師として臨床経験を積み、技術も知識も十分にあるはずなのに、「人をまとめる」「チームを導く」となると途端に自信がなくなる・・・。
これは決してあなただけの問題ではありません。
実は、多くの看護師が直面するこの壁の正体は、「リーダーシップ=生まれ持った才能」という誤解と、無意識のうちに自分を縛っている「固定観念」にあるのです。
本記事では、2,000時間以上のコーチング実績を持つ専門家が、マネジメント研修の理論をベースに、看護師が明日から実践できるリーダーシップの本質をお伝えします。
この記事を読むことで、あなたは次の3つを手に入れることができます。
- 医療現場で即使える具体的なマネジメント手法
- 自分を縛る固定観念から解放される4ステップ行動変容法
- 管理職として成功するための実践方法

それでは、看護師のリーダーシップについて、深く掘り下げていきましょう。
目次
看護師に求められるリーダーシップとは?医療現場特有の3つの課題
1.技術力とマネジメント力のギャップ

「あの人は看護技術が優れているから、きっと良いリーダーになれる」
組織内でよく聞かれる言葉ですが、そもそも、これが大きな誤解なのです。
臨床スキルが高いことと、リーダーシップがあることは、まったく別の能力だからです。
実際、現場で起こっている問題を見てみましょう。
優秀なプレイヤーだったAさんが主任に昇進したとします。
彼女は自分で仕事をこなすのは得意ですが、「部下に任せる」ことができません。
結果として、自分が忙しく動き回る一方で、新人スタッフは指示待ち状態。
チーム全体の生産性は上がらず、Aさん自身も疲弊していきます。
これは典型的な「プレイヤー型」から「マネジメント型」への転換の失敗例です。
プレイヤー型の看護師は、「自分がやった方が早い」「自分がやった方が確実」と考えがちです
しかし、リーダーの役割は「自分が成果を出すこと」ではなく、「チーム全体で成果を出すこと」。
この根本的な視点の転換ができないと、どれだけ優秀なプレイヤーでもリーダーとしては機能しません。
さらに、医療現場特有の問題として、「完璧主義」の文化があります。
医療はミスが許されない現場だからこそ、「自分がすべてを把握し、コントロールしなければ」という思考に陥りがちです。
しかし、この思考こそが、スタッフの成長を妨げ、チームの自律性を奪い、結果としてリーダー自身を孤立させていきます。
2.医療現場ならではのコミュニケーション問題
看護師のリーダーシップを考える上で避けて通れないのが、多職種連携におけるコミュニケーションの複雑さです。
医師、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカー、事務職員・・・看護師は病院内のあらゆる職種と連携しながら、患者さんのケアを調整する「ハブ」の役割を担いますよね。
それぞれの職種には異なる価値観、異なる優先順位、異なるコミュニケーションスタイルがあります。
医師には簡潔で論理的な報告が求められる一方、患者さんやご家族には共感的で丁寧な説明が必要です。
さらに、看護師同士のコミュニケーションにも課題があります。
- 「言いたいことが言えない」
- 「本音で話せる雰囲気がない」
- 「先輩に意見すると否定される」
こうした声は、多くの医療現場で聞かれます。
これは「心理的安全性」の欠如という問題です。
心理的安全性とは、「自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態」のこと。
これが低い職場では、重要な情報が共有されず、インシデントのリスクが高まり、スタッフのモチベーションも低下します。
特に、緊急時と平常時でコミュニケーションスタイルを使い分ける必要があるのも、医療現場の特徴です。
例えば、救急対応では、「○○さん、バイタル測定!」「△△さん、ドクターコール!」といった具合で、短く明確な指示が求められますよね。
しかし、平常時にこの指示命令型のコミュニケーションばかりを続けていると、スタッフは「指示待ち」になり、自分で考える力を失っていきます。
リーダーには、状況に応じてコミュニケーションスタイルを柔軟に変える能力が求められるのです。
3.自分自身の「固定観念」がリーダーシップを阻む
ここまで読んで、「そうは言っても、私には無理…」と感じた方もいるかもしれません。
実は、その「私には無理」という思考そのものが、あなたのリーダーシップを阻んでいる最大の要因なのです。
私たちは誰しも、無意識のうちに「固定観念」を持っています。

「看護師長なら、すべての業務を完璧にこなせるべきだ」
「リーダーは弱みを見せてはいけない」
「わからないことがあるなんて、恥ずかしい」
こうした思い込みが、あなたの行動を制限し、本来持っているリーダーシップの発揮を妨げています。
これらの固定観念は、過去の経験で抑圧された感情から生まれていることが多いです。
たとえば、新人時代に先輩から厳しく叱責された経験があると、「間違いを指摘されるのが怖い」という感情が無意識に蓄積されます。
この抑圧された感情が、「完璧でなければならない」という固定観念を生み出し、「わからない」と素直に言えないリーダーをつくってしまうのです。
心理学では、これを「未完了の体験」と呼びます。
過去に十分に処理されなかった感情体験が、現在の行動パターンに影響を与え続けるのです。

実は、この固定観念からの解放こそが、リーダーシップを飛躍的に高める鍵なんですよね。
看護師リーダーが身につけるべき3つの軸
リーダーシップを体系的に身につけるためには、明確なフレームワークが必要です。
ここからは、看護師リーダーに不可欠な3つの軸をお伝えします。
- ビジョン共有力: 組織の方針を自分の言葉で部下に伝え、目標達成に導く力
- 関係構築力: 心理的安全性を確保し、本音で語れる場づくりをする力
- 人材育成力: メンバーとチームの強み・弱みを正しく認識し、仕事を通じて部下の成長をサポートする力
この3つの軸をバランスよく育てることで、真のリーダーシップが発揮されます。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
ビジョン共有力|組織の方針を自分の言葉で伝える力
多くの看護師リーダーが苦手とするのが、「病院の方針を自分の言葉でスタッフに伝える」ことです。
あなたは、朝のカンファレンスで、こんな風に伝えていませんか?
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今月から病院の方針でインシデント報告を強化します。皆さん、しっかり報告してください
・・・これは、ただの「伝達」であって、「伝える」ではありません。
スタッフの心には何も残らず、行動変容も起こらないでしょう。
ビジョン共有力の本質は、上位方針を「自分ごと」として語り、スタッフの行動につなげることです。
同じ内容を、ビジョン共有の視点で伝えるとこうなります。

今月からインシデント報告を強化するんだけど、これって私たちが大切にしている『患者さんの笑顔を守る』ことに直結してるんだよね。
小さなヒヤリハットを共有することで、大きな事故を防げる。つまり、報告することは患者さんを守る勇気ある行動なんだ。
私も先月、こんなヒヤリハットがあって・・・
この違い、わかりますか?
後者は、「なぜこの業務が必要なのか」という意味を伝えています。
そして、自分自身の体験を交えることで、スタッフとの距離を縮めています。
看護師リーダーに求められるのは、数値目標や業務指示を伝えるだけでなく、「その先にある意味」を共有することなのです。
そう考えれば、ビジョン共有力とは、目標を「自分たちの物語」に変える力とも言えます。
関係構築力|心理的安全性を確保する対話術
「うちの病棟は風通しが悪い」 「スタッフが本音を言ってくれない」
こうした悩みを持つ看護師リーダーは多いのですが、実は「風通しの良さ」は偶然生まれるものではありません。
リーダーが意図的につくり出すものなのです。
ちなみに、あなたは「スタッフとの関係を悪化させるフィードバック」と「スタッフが自ら行動し始めるフィードバック」の違いをご存知ですか?
従来のフィードバックは、こんな風に行われてきました。
- 「あなたは報告が遅い。もっと早く報告すべきです」
- 「今回、とてもいい仕事をしましたね」
しかし、これらのフィードバックには大きな問題があります。
一つ目の例は、相手を評価・批判する「Youメッセージ」です。
これを受け取ったスタッフは、防衛的になり、言い訳を考え始めます。
学びではなく、反発を生むのです。
二つ目の例は、抽象的すぎて、何が良かったのか伝わりません。
「いい仕事」の基準は人それぞれなので、評価者の主観に過ぎないのです。
その上で、最新研究が示す効果的なフィードバックは、次の原則に基づいています。
×「あなたはこうすべき」→ ○「私はこう感じた」(Iメッセージ)
「あなたの報告が遅い」ではなく、「昨日の○○の件、私は15時には情報が欲しかったんだ。なぜなら、その情報をもとに医師への報告内容を準備する必要があったから」
これは評価ではなく、「私の事実」を伝えています。
相手は防衛する必要がなく、次回の行動を具体的に理解できます。
×「いい仕事だ」→ ○「あなたのこの行動が私の役に立った」(具体的貢献の明示)
「いい仕事をしましたね」ではなく、「昨日、あなたが患者さんのご家族に丁寧に説明してくれたおかげで、ご家族の不安が和らいだのが表情で分かったよ。私もホッとした。ありがとう」
これは具体的な行動と、その影響を伝えています。
スタッフは「何が良かったのか」を明確に理解し、再現可能になります。
人間が真実の源といえる領域は、「その人自身の感覚や経験」だけなのです。
だからこそ、「私はこう感じた」という直感的フィードバックが、最も信頼性が高く、相手の行動変容を促すのです。
人材育成力|メンバーの個性を活かす育成法
「なぜあのスタッフには何度言っても伝わらないんだろう?」 「同じ指導をしているのに、成長するスタッフとしないスタッフがいる…」
こんな悩みを抱えている看護師リーダーは少なくありません。
実は、この問題の本質は「あなたの指導方法が悪い」のではなく、「スタッフの個性に合わせた指導ができていない」ことにあります。
人材育成力の核心は、メンバー一人ひとりの個性を正しく理解し、その人に最適なアプローチで成長をサポートすることです。
エゴグラム理論による個性診断の活用
エゴグラム理論とは、人間の自我状態を5つのタイプに分類し、それぞれの特徴と最適なコミュニケーション方法を明らかにした心理学理論です。
5つの自我状態は次の通りです。
- CP(厳格な親):責任感が強く、完璧主義。リーダーシップを発揮する一方、こだわりが強すぎることも。
- NP(養育的な親):思いやりがあり、世話好き。人の役に立ちたい反面、断れずに抱え込みがち。
- A(合理的な大人):理性的で現実的。データや根拠を重視し、冷静な判断ができる。
- FC(自由な子供):創造的で活動的。新しいことにチャレンジする一方、計画性に欠けることも。
- AC(順応した子供):協調的で安定的。チームワークを大切にするが、自己主張が苦手。
重要なのは、「どのタイプが良い・悪い」ではなく、「それぞれに強みと弱みがある」という理解です。
そして、看護師リーダーがすべきことは、それぞれの個性に合わせた接し方をすることなのです。
【実践編】看護師が明日から使えるリーダーシップ行動変容の4ステップ
ここまで看護師リーダーが身につけるべき3つの軸についてお伝えしてきました。
しかし、あなたは「理論は分かったけど、実際に行動を変えるのは難しい…」と感じているかもしれません。
そこで、ここからは、あなた自身のリーダーシップを根本から変える「4ステップ行動変容法」を具体的にお伝えします。
4ステップは次の通りです。
- 理想のリーダー像を明確にする
- 目標達成を阻む行動を特定する
- 行動の背後にある「恐れ」を言語化する
- 根底にある「固定観念」を発見し実験する
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
STEP1|理想のリーダー像を明確にする
「あなたは、どんなリーダーになりたいですか?」
この質問に、明確に答えられる看護師は意外と少ないのです。
多くの人は、「尊敬されるリーダー」「信頼されるリーダー」といった抽象的な答えを口にします。しかし、これでは行動につながりません。
ここで重要なのは「どんな存在でありたいか」を具体的にイメージすることです。
NG例:「尊敬されるリーダーになりたい」
これは抽象的すぎて、何をすればいいのか分かりません。
「尊敬」の定義も人それぞれです。
OK例:「スタッフが本音で相談できるリーダーになりたい」
これは具体的ですよね。
「本音で相談できる」という状態がイメージでき、そのために何をすべきか考えやすくなります。
理想のリーダー像を設定する際のポイントは、次の3つです。
- シンプルで肯定的な表現:「○○しない」ではなく「○○である」
- 自分の価値観に基づいている:他人の期待ではなく、自分が本当に望むこと
- 具体的な状態がイメージできる:その状態になった自分を思い浮かべられること
ワーク:1000文字で「私が思う理想の私」を書き出す

ではここで、実際にワークをやってみましょう。
紙とペンを用意して、次のテーマで1000文字書いてみてください。
「私が理想とするリーダー像」
ポイントは、次の質問に答える形で書くことです。
・どんな雰囲気を持っているか?
・スタッフからどんな風に頼られているか?
・どんな言葉をかけているか?
・困難な状況にどう対応しているか?
・仕事以外の時間はどう過ごしているか?
この作業は、あなたの潜在意識に「理想の自分」をインプットする重要なプロセスです。
実際に書き出すことで、漠然としていた理想が明確になり、行動の指針が生まれます。
STEP2|目標達成を阻む行動を特定する
理想のリーダー像が明確になったら、次に問うべきは「なぜ、今その状態になれていないのか?」です。
多くの人は、この問いに対して「時間がないから」「環境が悪いから」「スタッフが協力的でないから」といった外的要因を挙げます。
しかし、本当の原因は「あなた自身の行動」にあるのです。
これを「阻害行動」と言います。
阻害行動とは、理想の状態になることを妨げている、あなた自身の具体的な行動のことです。
たとえば、「スタッフが本音で相談できるリーダーになりたい」という目標があるとします。
この目標が達成されない原因として、こんな阻害行動が考えられます。
- 忙しそうにして、話しかけづらい雰囲気をつくっている
- スタッフの話を途中で遮って、自分の意見を言ってしまう
- 相談されても、すぐに「こうすべき」と答えを出してしまう
- スタッフの目を見て話せず、PCの画面を見ながら対応している
- 相談を受けても「忙しいから後にして」と断ってしまう
重要なのは、「性格」ではなく「行動」にフォーカスすることです。
「私は人付き合いが苦手だから」というのは性格の話であって、変えることが難しい。
しかし、「スタッフの話を途中で遮ってしまう」は行動なので、意識すれば変えることができます。
事例:「自信をもって話せない」看護師長の阻害行動分析
Gさんは、師長として「自信をもって堂々と話す人になりたい」という目標を持っていました。
しかし、実際にはカンファレンスで発言する時、いつも声が小さく、相手の目を見て話せませんでした。
Gさんの阻害行動を特定してみると、次のようなものが見つかりました。
- 会議で発言する前に、下を向いてしまう
- 声のボリュームが小さくなる
- 「たぶん…」「もしかしたら…」という曖昧な表現を多用する
- 質問されると、すぐに「すみません」と謝ってしまう
- 自分の意見を言った後、「でも、違うかもしれませんが…」と打ち消してしまう
これらはすべて、Gさんが無意識に行っている「行動」です。
この行動を認識することが、変化の第一歩なのです。
STEP3|行動の背後にある「恐れ」を言語化する
阻害行動を特定したら、次に問うべきは「なぜ、その行動をとってしまうのか?」です。
実は、すべての阻害行動の背後には、「恐れていること」があります。
上記のGさんの場合、「なぜ会議で下を向いて、小さな声で話してしまうのか?」を深掘りすると、こんな恐れが見つかりました。
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「間違ったことを言って、恥をかくのが怖い」
「専門知識が足りないと思われるのが怖い」
「批判されるのが怖い」
これらの恐れが、Gさんの行動を支配していたのです。
心理学では、これを「回避目標」と呼んだりします。
表面的には「自信をもって話したい」という目標を持っていても、無意識のレベルでは「恥をかきたくない」「批判されたくない」という回避目標が優先されているのです。
そして、この回避目標の方が強力なため、表の目標は達成されないのです。
この恐れを言語化することで、Gさんは初めて「だから私は、自信がないように振る舞ってしまうんだ」と腑に落ちたのです。

この恐れを言語化し、意識化することが、変化への重要な一歩なんですね。
STEP4|根底にある「固定観念」を発見し実験する
恐れを言語化したら、最後に問うべきは「その恐れを生み出している根本原因は何か?」です。
すべての恐れの根底には、「強力な固定観念」があります。
固定観念とは、あなたが「確固たる事実だ」と信じ込んでいる思い込みのことです。
Gさんの場合、「間違ったことを言って恥をかくのが怖い」という恐れの根底には、こんな固定観念がありました。
「所属長なら、その分野のことは誰よりも精通しているべきだ」
この固定観念があるから、「知らない」「わからない」と言うことが「恥」だと感じてしまうのです。
しかし、冷静に考えてみてください。
師長が、すべての医療知識、すべての看護技術、すべての業務プロセスについて、誰よりも詳しい必要があるでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
師長の役割は「すべてを知っていること」ではなく、「チームをまとめ、適切な判断を下すこと」です。知らないことがあれば、専門家に聞けばいいのです。
しかし、Gさんはこの固定観念に縛られていたため、「わからない」と言うことができなかったのです。
では、どうすれば良いのか?
それは「小さな実験を繰り返して、安心を手に入れること」です。
例えば、部下に質問をされた時に「私も明確な答えを持っていないから、一緒に考えてみましょう」と答えてみるなど、心理的ハードルの低いシチュエーションから練習をします。
このように、固定観念を実験的に検証することで、あなたは新しい行動パターンを獲得し、本来のリーダーシップを発揮できるようになるのです。
看護師リーダーシップを加速する内省の習慣
ここまで、リーダーの3つの軸、4ステップ行動変容法について詳しくお伝えしてきました。
しかし、「一度学んだだけでは、なかなか定着しない…」というのも事実です。
リーダーシップは、一朝一夕で身につくものではありません。
日々の習慣の積み重ねが、あなたを真のリーダーに育てていくのです。
ここでは、最後に「看護師リーダーシップを加速させる内省の習慣」をお伝えします。
毎日の「内省」習慣
多くの人は、「反省」と「内省」を混同していますが、この2つはまったく異なるものです。
反省とリフレクションの違い
反省:
- 「誤り」を正すこと
- 間違い・ミスにスポットを当てる
- 過去の失敗に注目する
- 「私は何を間違えたのか?」と問う
- 自己否定的になりがち
内省:
- 未来志向の改善
- フラットな視点での客観的振り返り
- より良い効果をもたらすための学習
- 「この体験から何を学べるか?」と問う
- 自己成長的
看護師は、インシデントレポートや振り返りの文化があるため、「反省」には慣れています。
しかし、「反省」ばかりしていると、自己否定感が強まり、モチベーションが下がってしまいます。
一方、「内省」は、失敗も成功も含めて、すべての体験を学びに変える思考法です。
「今日の行動で何に気づいたか?」を記録
内省を習慣化する最も効果的な方法は、毎日寝る前に5分間、次の質問に答える形で記録することです。
内省の3つの質問:
- 今日、うまくいったことは何か?
小さなことでもOK。スタッフとの会話がスムーズだった、患者さんが笑顔になった、など。 - 今日、うまくいかなかったことは何か?そこから何を学べるか?
失敗を責めるのではなく、「次はどうすればいいか?」を考える。 - 明日、試してみたいことは何か?
今日の学びを、明日の行動にどう活かすか?小さな実験を設計する。
例:看護師Hさんのリフレクション
1. 今日、うまくいったこと:
「新人のIさんに、『一緒に確認しよう』という声かけをしたら、Iさんが安心した表情になった。これまでの『これ、やっておいて』という指示より、効果的だった」
2. 今日、うまくいかなかったこと:
「カンファレンスで、医師の意見に反論しようとしたけど、うまく言葉が出なかった。なぜか考えると、『間違っていたら恥ずかしい』という恐れがあった。でも、患者さんのためには、疑問を伝えるべきだった」
3. 明日、試してみたいこと:
「明日のカンファレンスでは、『これは私の理解なんですが』という前置きをして、自分の意見を伝えてみる」
このように、内省は次の行動につながる「学習サイクル」なのです。

このサイクルを毎日回すことで、あなたのリーダーシップは日々進化していきます!
まとめ|看護師のリーダーシップは「あり方」で決まる
今回は「看護師のリーダーシップ」についてまとめましたが、いかがだったでしょうか?
最後に、最も重要なメッセージをお伝えします。
看護師のリーダーシップは「技術」ではなく「あり方」である
多くの人は、リーダーシップを「スキル」だと考えています。
「コミュニケーション技術を磨けば、リーダーになれる」 「マネジメント手法を学べば、チームをまとめられる」
もちろん、技術も重要です。
しかし、それだけでは不十分なのです。
本当のリーダーシップとは、「どんな存在であるか」という「あり方」から生まれます。
スタッフは、あなたの言葉ではなく、あなたの「あり方」を見ています。
「この人は、本当にスタッフのことを考えているか?」 「この人は、自分の言葉に責任を持っているか?」 「この人は、困難な状況でも誠実に向き合っているか?」
こうした「あり方」が、信頼を生み、リーダーシップを発揮させるのです。
3つの軸と4ステップ行動変容で誰でも成長できる
「私にはリーダーシップの才能がない…」
そう思っている方もいるかもしれません。しかし、安心してください。
リーダーシップは、生まれ持った才能ではなく、習得できるスキルであり、育てることのできる「あり方」なのです。
本記事で繰り返しお伝えしてきたのは、「固定観念からの解放」の重要性です。
「リーダーは完璧でなければならない」 「わからないと言ってはいけない」 「弱みを見せてはいけない」 「失敗は恥ずかしいことだ」
こうした固定観念が、あなたの可能性を制限しています。
であれば、それらを一つずつ解放していくことで、あなたは本来の自分を取り戻し、本来の能力を発揮できるようになるのです。
明日から実践できる小さな一歩を踏み出そう
「よし、今日からリーダーシップを身につけるぞ!」
そう意気込むのは素晴らしいことですが、完璧を求めすぎないでください。
大切なのは、「小さな一歩」を踏み出すことです。
明日、職場で、次のうちどれか一つだけ実践してみてください。
- スタッフの話を、途中で遮らずに最後まで聞いてみる
- 「私はこう感じた」というIメッセージで、フィードバックしてみる
- 「わからない」と素直に言ってみる
- 寝る前に5分間、理想のリーダーとしての自分をイメージしてみる
- 今の自分を制限している固定観念を、一つ書き出してみる
たった一つの小さな行動が、あなたのリーダーシップを変え始めます。
そして、その小さな変化が、スタッフとの関係を変え、チームの雰囲気を変え、あなたの人生を変えていくのです。

あなたは、すでにリーダーとしての可能性を持っています。あとは、その可能性を解放する勇気を持つだけです。あなたの成長を、心から応援しています!

岩下 知史(イワシタ トモフミ)
コーチ/研修講師/才能診断の専門家
コーチとして2,000時間の個人セッションを行い、企業研修講師として1,000人以上に指導。主に経営者、管理職といったリーダー層の育成に力を入れている。
個人の才能発掘、思い込みを外すコーチング、チームビルディングを得意とする。
「主任や師長になったけれど、スタッフをうまくまとめられない…」
「起業したいけれど、自分にリーダーシップがあるか不安…」
「子育てしながら収入を増やしたいけど、管理職は荷が重い…」