
今回はこんな事を考えているあなたに、その悩みを解決する強力なツールについてお伝えします。
それが「エゴグラム」です。
エゴグラムは、あなたの性格を5つの要素で分析し、客観的に自己理解を深めることができる心理学的な診断ツールです。
医療・看護の現場でも広く活用されており、信頼性の高い自己分析手法として知られています。
というわけで、本記事では次の3つをお伝えしていきます。
- エゴグラムの基礎知識と看護師が使うメリット
- 5つの性格タイプ別の詳細解説と診断結果の読み解き方
- タイプ別の適職・働き方・起業適性
この記事を読めば、あなたの強みと弱みが明確になり、最適なキャリア選択ができるようになります。
それでは、詳しく見ていきましょう。
目次
エゴグラムとは?看護師の自己分析に役立つ理由
エゴグラムの基礎知識
エゴグラムは、心理学者エリック・バーンが創始した「交流分析理論」に基づく性格診断ツールです。
エゴグラムでは、人間の性格を次の5つの自我状態で分析します。
- CP(Critical Parent:厳格な親):責任感、規律、批判
- NP(Nurturing Parent:養育的な親):思いやり、世話、保護
- A(Adult:合理的な大人):論理、冷静、現実的判断
- FC(Free Child:自由な子供):創造性、自発性、感情表現
- AC(Adapted Child:順応した子供):協調性、遠慮、適応
それぞれの要素を0〜100点でスコア化し、グラフで視覚的に表示します。
このグラフから、あなたの性格傾向、強み、弱み、そして最適な環境が見えてくるのです。
エゴグラムは、企業の人材育成、カウンセリング、そして医療現場でも広く活用されています。
本来、心理学はとても複雑で一般的に扱うことは難しいのですが、それを誰もが医療現場で使えるようにまとめられた書籍もあります。

わかりやすい交流分析 (Transactional analysis series 1) 単行本
中村 和子 (著), 杉田 峰康 (著, 編集)
特に看護師は、患者さんやスタッフとの関わりが多い職業なので、自己理解とコミュニケーション改善に非常に役立ちます。
看護師がエゴグラムを使うメリット
看護師がエゴグラムを活用すると、次のようなメリットがあります。
1. 自分の強み・弱みが明確になる
「なぜ自分は急性期がつらいのか?」「なぜ患者さんの感情に引きずられてしまうのか?」こうした疑問の答えが、エゴグラムの結果から見えてきます。
たとえば、NP(養育的な親)が高い人は、患者さんへの共感力が強みですが、自己犠牲になりやすいという弱みもあります。
この自覚があれば、意識的に自分のケアを優先する工夫ができます。
2. 職場での人間関係の悩みが理解できる
「なぜあの先輩とうまくいかないのか?」という悩みも、エゴグラムで説明できることがあります。
たとえば、CP(厳格な親)が高い上司とAC(順応した子供)が高いあなたがいる場合、上司は「もっとしっかりして」と思い、あなたは「怖くて意見が言えない」と感じる・・・というミスマッチが起こります。
相手のタイプを理解することで、コミュニケーションの工夫ができるようになります。
3. 適した診療科・職場環境がわかる
急性期が合う人、慢性期が合う人、クリニックが合う人・・・それぞれ性格タイプによって最適な環境が違います。
エゴグラムの結果を見ることで、「自分に合っている職場はどこか?」が客観的に判断できます。
4. キャリア選択(転職・起業)の判断材料になる
転職や起業を考えている看護師にとって、エゴグラムは強力な判断材料になります。
「自分は起業に向いているか?」「どんなビジネスモデルが合っているか?」といった疑問に、科学的な根拠を持って答えることができます。
5. 患者さんやスタッフとのコミュニケーションが改善する
エゴグラムで自己理解が深まると、相手のタイプも推測できるようになります。
「このスタッフはAC型だから、丁寧にフォローが必要だな」「この患者さんはCP型だから、簡潔に説明しよう」といった具合に、相手に合わせたコミュニケーションができるようになります。
無料で診断できるエゴグラムツール紹介
エゴグラムは、オンラインで無料で診断できます。
所要時間は5〜10分程度で、簡単な質問に答えるだけです。
検索エンジンで「エゴグラム 無料診断」と検索すると、複数のツールが見つかります。
診断後、5つの要素のスコアがグラフで表示されるので、それを見ながら本記事を読み進めると、より深い理解が得られます。
参考:5分でできるエゴグラムセルフチェック2024/こころの耳(厚生労働省)
まずは診断を受けてから、次のセクションで詳しい解説を読み進めるとより理解が深まります。
エゴグラム5つの自我状態を看護師視点で徹底解説
それでは、5つの自我状態について、看護師の視点で詳しく解説していきます。
CP(厳格な親)が高い看護師の特徴
性格: 責任感が強く、ルールや規律を重視します。「こうあるべき」という基準が明確で、それを守ることにこだわります。完璧主義の傾向があり、自分にも他人にも厳しくなりがちです。
強み:
- 正確で確実な医療処置ができる
- リーダーシップを発揮できる
- 安全管理や感染管理が得意
- ルールを守り、後輩指導もしっかりできる
- 責任ある仕事を任せられる
弱み:
- 融通が利かず、柔軟性に欠ける
- 他者に対して批判的になりやすい
- ストレスを溜めやすく、燃え尽きやすい
- 完璧を求めすぎて自分を追い込む
- 「べき論」で患者さんやスタッフを縛ることがある
向いている場面: 手術室、ICU、救急外来など、正確性とルール遵守が最優先される部署で能力を発揮します。また、感染管理や医療安全管理、看護師長などの管理職にも向いています。
注意点: 完璧主義が強すぎると、自分を追い込んで燃え尽きてしまいます。「80点でOK」と自分を許す練習が必要です。
NP(養育的な親)が高い看護師の特徴
性格: 思いやりがあり、世話好きで献身的です。人の役に立つことに喜びを感じ、困っている人を放っておけません。優しく、共感力が高い性格です。
強み:
- 患者さんへの深い共感力
- 丁寧で心のこもったケア
- 信頼関係を築くのが得意
- 患者さんやご家族から感謝される
- チーム内の潤滑油になる
弱み:
- 「No」と言えず、仕事を抱え込む
- 自己犠牲になりやすい
- 他人を優先しすぎて自分のケアを忘れる
- 感情移入しすぎて疲弊する
- 頼まれると断れない
向いている場面: 緩和ケア、小児科、高齢者病棟、訪問看護など、患者さんとじっくり関わる環境で輝きます。在宅ケアやデイサービスも適しています。
注意点: 自分を犠牲にしすぎて燃え尽きやすいため、意識的に「自分の時間」を確保することが重要です。
A(合理的な大人)が高い看護師の特徴
性格: 論理的で冷静、現実的な判断ができます。感情に流されず、データや事実に基づいて行動します。効率性を重視し、無駄を嫌います。
強み:
- 的確なアセスメント能力
- 冷静な状況判断
- 効率的な業務遂行
- データ分析が得意
- 感情に左右されない判断
弱み:
- 感情的な共感が苦手
- 冷たく見られることがある
- 患者さんとの感情的つながりが薄い
- 雑談や世間話が苦手
- 論理で片付けようとして相手を傷つけることも
向いている場面: 救急外来、手術室など冷静な判断が求められる部署、治験コーディネーター、産業看護師、研究職、医療情報管理など、データや論理が重視される仕事に向いています。
注意点: 感情的なコミュニケーションも時には必要です。患者さんの気持ちに寄り添う練習をすると、関係性が改善します。
FC(自由な子供)が高い看護師の特徴
性格: 明るく、創造的で活動的です。新しいことに挑戦するのが好きで、柔軟な発想ができます。場の雰囲気を明るくする力があります。
強み:
- 柔軟な発想で問題解決
- 場の雰囲気を明るくする
- 新しいことへの挑戦を恐れない
- 患者さんを笑顔にできる
- 変化の多い環境でも対応できる
弱み:
- 計画性に欠ける
- ルールを軽視しがち
- 飽きっぽく、ルーティンワークが苦手
- 衝動的な行動をすることがある
- 地道な作業が続かない
向いている場面: 急性期(変化が多い)、小児科(子どもと楽しく関われる)、訪問看護(自由度が高い)、そして起業(最も向いている)。
注意点: 計画性や継続性を補完する仕組みが必要です。スケジュール管理ツールやチェックリストを活用しましょう。
AC(順応した子供)が高い看護師の特徴
性格: 協調的で穏やか、控えめです。周囲に合わせることが得意で、チームワークを大切にします。争いを避け、安定を求めます。
強み:
- 優れたチームワーク
- 丁寧で確実な業務遂行
- 安定した対応
- 指示されたことを確実にこなす
- 職場の調和を保つ
弱み:
- 自己主張が苦手
- 決断が遅い
- ストレスを溜め込みやすい
- 「嫌だ」と言えず我慢する
- 変化に対する不安が強い
向いている場面: 慢性期病棟、療養型病院、クリニック、健診センターなど、ゆったりとした環境でルーティンワークが中心の職場。
注意点: 自分の意見を言えずストレスが蓄積するため、小さなことから自己主張の練習をすることが大切です。
エゴグラムタイプ別診断結果の読み解き方
エゴグラム診断を受けたら、次はその結果をどう読み解くかが重要です。
グラフの見方と基本パターン
診断結果は、5つの要素がグラフで表示されます。
注目すべきは、**高い要素(60点以上)と低い要素(40点以下)**です。
バランス型:5つの要素が40〜60点の範囲に収まっている → 柔軟に対応できるが、特徴が薄いとも言える
ピーク型:1〜2つの要素が突出して高い → 強みがはっきりしているが、偏りもある
看護師に多いパターンは、NP高め・AC高めです。
これは、「人の役に立ちたい」「協調性を大切にする」という看護師としての資質を表しています。
タイプ別の代表的なパターン
リーダータイプ(CP高、NP中、A高) 責任感があり、論理的で、時に厳しいリーダー。管理職や教育担当に向いています。
ケアラータイプ(NP高、AC高) 献身的で協調的。患者さんに寄り添うケアが得意ですが、自己犠牲になりやすいので注意。
クールタイプ(A高、CP中、他低め) 冷静で論理的。救急や治験コーディネーター、研究職に向いています。
クリエイタータイプ(FC高、NP中) 明るく創造的。起業や新しいプロジェクトに最適。
協調タイプ(AC高、NP高、FC低) 穏やかで献身的。慢性期や療養型病院で安定して働けます。
複数要素が高い場合の読み解き方
CP×NP高:厳しいけど優しいリーダー ルールを守らせつつ、スタッフのケアもできる理想的な師長タイプです。
NP×AC高:献身的で我慢強いが疲弊しやすい 患者さんのために尽くし、周囲にも気を遣いすぎて、燃え尽きやすいタイプです。
A×FC高:論理的だが柔軟性もある データに基づきつつ、臨機応変な対応もできるバランスの良いタイプです。
エゴグラムの「裏の目標」を理解する
実は、各要素の高さには「裏の目標(回避したいこと)」が隠れています。
- CP高:屈辱を味わいたくない→だから完璧を目指す
- NP高:役に立たない人間になりたくない→だから献身的になる
- A高:合理性を失いたくない→だから感情を排除する
- FC高:行動の制約を受けたくない→だからルールを嫌う
- AC高:仲間の中で孤立したくない→だから周囲に合わせる
この「裏の目標」が、あなたのストレスや行動パターンの原因になっています。
理解することで、対処法が見えてきます。
エゴグラムタイプ別:看護師に向いている職場と働き方
それでは、次に各タイプに最適な職場と働き方を見ていきましょう。
これらの情報は、あくまでエゴグラムの特性から考えうる可能性の1つです。必ずしも全てのケースに当てはまるものではないことをご理解ください。
CP(厳格な親)が高いタイプの適職
病棟勤務: 手術室、ICU、救急外来など、正確性とルール遵守が最優先される部署で能力を発揮します。
管理職・教育: 看護師長、教育担当、看護教員として、後輩を育成する役割に向いています。
専門性の高い分野: 感染管理認定看護師、医療安全管理者など、専門知識を活かせる分野。
起業適性: 訪問看護ステーション開業(しっかりとした経営ができる)、セミナー講師(知識を体系的に教えられる)
注意点: 完璧主義を緩める工夫が必要です。「100点を目指さず、80点でOK」と自分を許しましょう。
NP(養育的な親)が高いタイプの適職
病棟勤務: 緩和ケア病棟、小児科、高齢者病棟など、患者さんとじっくり関わる環境。
地域医療: 訪問看護、在宅ケア、デイサービスなど、利用者さんとの深い関係性を築ける仕事。
予防医療: 保育園看護師、健康相談窓口など、予防と教育が中心の仕事。
起業適性: オンライン健康相談(共感力が活きる)、看護師向けキャリアコーチング(相手の悩みに寄り添える)
注意点: 自分のケアを優先する仕組みづくりが必須です。「自分が元気でないと、誰も助けられない」ことを忘れずに。
A(合理的な大人)が高いタイプの適職
病棟勤務: 救急外来、手術室など、冷静な判断が求められる部署。
企業・研究: 治験コーディネーター、産業看護師、医療研究職、医療情報管理など。
データ関連: 医療統計、データ分析、医療政策関連の仕事。
起業適性: 医療ライター(論理的な文章が書ける)、医療監修業務、データ分析コンサルタント
注意点: 感情的なコミュニケーションも時には必要です。「データだけでなく、気持ちも大切」と意識しましょう。
FC(自由な子供)が高いタイプの適職
病棟勤務: 急性期(変化が多く飽きない)、小児科(子どもと楽しく関われる)
自由度の高い環境: 訪問看護(自分でスケジュールを組める)、フリーランス看護師
クリエイティブな仕事: 医療系インフルエンサー、セミナー講師、医療教育コンテンツ制作
起業適性: 最も起業に向いているタイプ。自分でビジネスを立ち上げ、自由に働くスタイルが最適。
注意点: 計画性を補完する仕組みが必要です。スケジュール管理アプリ、会計ソフトなどを活用しましょう。
AC(順応した子供)が高いタイプの適職
病棟勤務: 慢性期病棟、療養型病院など、ゆったりとした環境。
落ち着いた環境: クリニック、健診センター、検診業務など。
ルーティンワーク: 透析室、内視鏡室など、決まった手順で進む業務。
起業適性: 副業から小さく始める、在宅ワーク(医療ライター、データ入力など)
注意点: 自己主張の練習が必要です。小さなことから「これは嫌です」と言える練習をしましょう。
↓具体的な職場については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
エゴグラムタイプ別:起業・副業の適性と成功ポイント
最後に、起業・副業に関する適性も見ていきましょう。
副業に向いているタイプと始め方
NP高タイプ: オンライン健康相談、看護師向けキャリアコーチングなど、共感力が武器になる仕事。
A高タイプ: 医療ライター、記事監修業務など、論理的な文章が書ける仕事。
FC高タイプ: SNS発信、セミナー講師など、人を惹きつける力が活きる仕事。
AC高タイプ: 在宅での記事執筆、データ入力など、一人で黙々と作業できる仕事。
↓看護師さんのプチ起業アイデア10選をまとめました。
タイプ別の起業成功ポイント
CP高タイプ: 完璧主義を緩めて「まず始める」ことが重要。80点でスタートし、走りながら改善していく。
NP高タイプ: 無料奉仕になりすぎない価格設定を。「あなたの時間と知識には価値がある」と自覚する。
A高タイプ: 感情的な顧客対応も学ぶ。データだけでなく、共感のコミュニケーションも大切。
FC高タイプ: 計画とルーティンの仕組み化。スケジュール管理、売上管理を自動化する。
AC高タイプ: 自己主張の練習、値段交渉の練習が必須。「安売り」しない勇気を持つ。
↓あなたは「起業」に向いている?4つのタイプでわかる起業特性
エゴグラム診断を活かしたキャリア設計3ステップ
最後に、エゴグラムを実際のキャリア設計に活かす方法をお伝えします。
診断を受けて自分のタイプを知る
まずは無料診断ツールで実施し、結果を記録しましょう。できれば、複数のツールで診断すると、より正確な傾向がわかります。
ステップ2:強み・弱みを理解して職場選びに活かす
今の職場が自分のタイプに合っているか確認しましょう。ミスマッチがあれば、転職を検討する際の判断材料になります。
ステップ3:起業・副業の適性を見極める
自分に合ったビジネスモデルを選び、弱点を補完する仕組みをつくりましょう。一人で全部やろうとせず、外注やツールを活用することが成功の鍵です。
まとめ
エゴグラムは、看護師の自己分析に非常に役立つツールです。
- 5つの自我状態で性格タイプが客観的にわかる
- タイプごとに向いている職場・働き方が違う
- 起業・副業の適性もタイプで判断できる
- 大切なのは自分の強みを活かし、弱みを補完すること
「向いていない」と感じているのは、環境が合っていないだけかもしれません。エゴグラムで自分を理解し、最適なキャリアを選択しましょう。

岩下 知史(イワシタ トモフミ)
コーチ/研修講師/才能診断の専門家
コーチとして2,000時間の個人セッションを行い、企業研修講師として1,000人以上に指導。主に経営者、管理職といったリーダー層の育成に力を入れている。
個人の才能発掘、思い込みを外すコーチング、チームビルディングを得意とする。